少しずつ認知されてきたと感じるインフュージョン成型。その一端を担っている(という自負はあるw)身としては嬉しい一方で、一部では間違った認識や一緒くたというような扱いをされているように感じることもちらほら。
具体的には、「インフュージョンカーボンだから軽くてそこそこ強度があってお手頃なんでしょ?!」というような認知。これについてはインフュージョンカーボンはコスパのいいカーボンであることは事実ではありますが、正直半分正解で半分不正解だと思っています。
理由はすごくシンプルで、インフュージョン成型にはいくつかの種類があるからです。今回は、否定的な内容ではなく、ユーザーさんに正しく商品を選んでいただくことと、インフュージョンについてより理解を深めていただきたく改めて「インフュージョン成型の種類」について、解説させていただきます!
そもそもインフュージョンとは?種類も解説!
まず、インフュージョンとは?についてですが、これを最も簡単に説明すると「真空パック内で大気圧を掛けて成型すればインフュージョン成型」と呼べます。
よって、中に入る物がカーボンだろうが、ガラス繊維だろうが、上記の製法であればインフュージョン成型となります。
つまり一言でインフュージョン成型といっても具体的にはいくつかに派生します。ではどのような種類があるのか各々の特徴と共に解説します。
1.フルカーボン+エポキシ
- 使用基材:全てカーボン繊維またはインフュージョン用ハニカム素材
- 使用樹脂:インフュージョン用エポキシ
これがCF Labが得意としている製法です。いわゆるドライカーボン(オートクレーブ成型)に限りなく近くありつつも、コストを抑えたカーボンアイテムとなります。
使用される繊維はカーボン繊維またはハニカム材、樹脂はエポキシを使用する事により、様々な強度・耐久性・軽量性の両立が行えます。
デメリットは各資材が高額なため、インフュージョンカーボン製品としては単価が高額になります。(それでもドライカーボンに比べると…となりますが)

2.フルカーボン+その他樹脂
- 使用基材:全てカーボン繊維またはインフュージョン用ハニカム素材
- 使用樹脂:インフュージョン用ポリエステルまたはビニエステル
積層繊維は1と同じですが、使用する樹脂がエポキシではない製法です。
各樹脂メーカーの特徴があり、樹脂によってはコスト面でのメリットなどはあるかもしれません。しかしながら、CF Labとしてはエポキシでないため、強度面について疑問が残るので一切使用せず、各種検証が現段階ではできておりません。
検証してないものを記事に載せるなよwという意見も聞こえてきそうですが、あくまでCF Labとしては実績がございませんが、世の中にはこういったインフュージョンカーボンアイテムが存在しますので、一応解説はさせていただきました。重ね重ねになりますが、決してこの製法を否定するわけではありません。
3.意匠面のみカーボン、あとはガラス繊維
- 使用基材:1プライのみカーボン繊維、強度を持たせるのはガラス繊維
- 使用樹脂:インフュージョン用エポキシまたはインフュージョン用ポリエステルまたはビニエステル
いわゆるウェットカーボンと同様。意匠面のみにカーボンを使用、強度を保つのはガラス繊維という構成です。
弊社でもテストした事がありますが、誰もが想像できる様に強度が弱いです。特に張りが出ません。
同じ板厚をフルカーボンとこの工法でテストしましたが、張りがないので板厚を増やさないと同様の強度が出ませんでした。結果としては材料代は安価になりますが、製作工数がかかる上、機能部品に採用するほどの強度にはならないという結論です。
4.意匠面のみカーボンで裏面はFRP
- 使用基材:1プライのみカーボン繊維、強度を持たせるのはガラス繊維 ボンネットのような裏骨がある製品は骨部分はガラス繊維を用いたFRP
- 使用樹脂:インフュージョン用エポキシまたはインフュージョン用ポリエステルまたはビニエステル&ポリエステルのハンドレイ成型
ボンネットやトランクのように表裏がある製品で、表面のみカーボンでインフュージョン、裏骨はFRPです。
4に似ておりますが、裏骨は完全にFRPなのでインフュージョン??となりますが、とても安価に製作できるため、ドレスアップにはとても適していると思います。その一方で、強度面がFRPと同等になるため、強度と軽量性を求めることはできません。
5.基材は全てガラス繊維・樹脂はポリエステルまたはビニエステル
- 使用基材:ガラス繊維
- 使用樹脂:インフュージョン用ポリエステルまたはビニエステル
『え?そんなの存在するの?』と思われるかもしれませんが、実は一番身近な物かもしれません。
この製法で生まれたアイテムは、主にお風呂や洗面台で活躍する樹脂系の水回りアイテムです。こちらは塗装前提で強度をそこまで求めない物に用いられます。
インフュージョン成型とガラスマットの組み合わせは複雑な形状にも柔軟に対応出来るので昔から採用されている方法です。自動車部品としてはほとんどないかもしれませんね…
まとめ:それぞれの用途に合ったアイテム選定を
このようにインフュージョン成型といっても、様々な種類と特徴があります。
商品ページに『インフュージョン成型』と記載があっても、高強度が保証されている商品とは限らないのでご注意ください。特に単純に目につくところがカーボン、あるいは黒であれば黒ゲルコート仕上げとなっているような場合、見た目だけで全てを把握することはできませんので…
同じカーボン製品であっても、大事なのはその製品の製造過程で使われる基材です。フルカーボンと謳われていても、『どこにどのカーボンを使用するか、どの方向に何プライ積層するか』がとても大切です。
これはインフュージョンカーボンに限らずドライカーボンでも同様で、単にカーボンを積層しても高強度で軽量な製品は作れません。この点についてはカーボンアイテムを手がける様々な職人やその企業の考え方などが折り重なって、独自のノウハウを形成し、場合によっては機密になる部分ではあります。語りたい人にとってはずーーーっと語っていられる部分でもありますので、好きな方向けの記事はまたリリースするかもしれませんw
というわけで、今後カーボン製品を購入される際には見た目だけでなく、このようなところも考えてみると面白いかもしれません。

最後に重ねてのご案内となりますが、このブログはCF Labが持たないノウハウは取り組まない製法を否定するわけではなく、ユーザー様の商品選定の知識として深めていただければという目的でまとめております。
たとえファッションカーボンであっても、機能パーツとしてではなく目的に沿った使い方であればなんら問題ありません。しかしその逆の場合は事故の元になりますので、ユーザー様の正しい知識と、ご自身でしっかり調べて納得された上でご判断などをいただければと思います。
今後もマニアックな解説記事をリリースしていこうと思いますので、またどうぞよろしくお願いしますw